2010年09月28日
心霊イイ話 紫陽花
紫陽花
941 名前:1[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:18:17 ID:6TDAqokh0
去年の今頃、ばあちゃんが死んだ。ずっと入院生活だったし、医者からも
「いつ逝ってもおかしくない」
と言われてて心の準備はできてたはずだったが、やっぱり悲しくて、棺の中
のばあちゃんの顔を見れないまま葬式進行、出棺になった。
みんなで棺に花を入れていたら、母が
「あっ! お母さん紫陽花大好きだった!」
といきなり叫んだ。入れるために用意されていた花の中に、紫陽花は無かった。
好きだった花だし入れてあげよう! となって、私と従姉妹二人と叔父で車に
乗り、あちこちの花屋に行ったが、何故だか紫陽花はどこにも売ってない。
葬式屋(?)に出棺を待ってもらっている状態だったので、遠くの花屋まで
行く時間は無い。仕方なく帰ろうとしたら、道沿いの家の庭に沢山の紫陽花が
咲いてるのが見えた。その紫陽花の横に、初老の男性が立って何かしていた。
あの人に言えば譲ってくれるかも! と叔父が言って車を止め、全員で男性の
元へ走った。
あの、と話しかけると、男性はすっ、と、今切ったばかりのようなきれいな
紫陽花を束で叔父に手渡した。
「ほら、早く行ってあげなさい」
そう言って笑う男性に私たちは何度も頭を下げ、急いで帰り、無事にばあちゃ
んの棺に紫陽花を入れる事ができた。私も入れたが、その時初めて見たばあち
ゃんの顔は、安らかでまるで寝てるみたいだった。
942 名前:2[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:19:25 ID:6TDAqokh0
翌日、私たちは「お礼をしなきゃ」とお菓子を持ってその家を訪ねた。
けど、着いたら。そこ、どう見ても空き家。昨日見た時は、確かに普通の家
だったのに。
屋根瓦とかはがれてるし、壁も一目見て「腐ってる」とわかるような状態。人
の気配もしない。でも、昨日見た紫陽花は確かにそこの庭に生えてる。近所で
他に庭に紫陽花がある家は無かった。
叔父と一緒に「確かにここだったよね?」とうろうろしていたら、従姉妹が
「よそのおじいさんが、独断で譲ってくれたんかね?」
と言い出した。
そうかも……と私たちは納得しかけたが、その時改めて考えてみると、あの
男性は私たちが何も言わないうちに紫陽花を渡してくれた。
いくら私たちが喪服だったからって、そんなすぐ用件がわかるだろうか?
それに、私たちが男性に話しかけた時、男性は既に手に紫陽花の束を持ってい
たようだった。まるで、私たちが来るのがわかっていたように。
私も叔父も従姉妹も、何となく黙ってしまい、結局空き家の玄関にお菓子を
置いて帰った。誰もいない家に何度も頭を下げて。
あれから一年経ったが、いまだに不思議。
その家とばあちゃんとの縁も見えない。
けど、あの家に住んでいた人以外の「何か」が、私たちに優しくしてくれたの
かな、と思っている。
941 名前:1[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:18:17 ID:6TDAqokh0
去年の今頃、ばあちゃんが死んだ。ずっと入院生活だったし、医者からも
「いつ逝ってもおかしくない」
と言われてて心の準備はできてたはずだったが、やっぱり悲しくて、棺の中
のばあちゃんの顔を見れないまま葬式進行、出棺になった。
みんなで棺に花を入れていたら、母が
「あっ! お母さん紫陽花大好きだった!」
といきなり叫んだ。入れるために用意されていた花の中に、紫陽花は無かった。
好きだった花だし入れてあげよう! となって、私と従姉妹二人と叔父で車に
乗り、あちこちの花屋に行ったが、何故だか紫陽花はどこにも売ってない。
葬式屋(?)に出棺を待ってもらっている状態だったので、遠くの花屋まで
行く時間は無い。仕方なく帰ろうとしたら、道沿いの家の庭に沢山の紫陽花が
咲いてるのが見えた。その紫陽花の横に、初老の男性が立って何かしていた。
あの人に言えば譲ってくれるかも! と叔父が言って車を止め、全員で男性の
元へ走った。
あの、と話しかけると、男性はすっ、と、今切ったばかりのようなきれいな
紫陽花を束で叔父に手渡した。
「ほら、早く行ってあげなさい」
そう言って笑う男性に私たちは何度も頭を下げ、急いで帰り、無事にばあちゃ
んの棺に紫陽花を入れる事ができた。私も入れたが、その時初めて見たばあち
ゃんの顔は、安らかでまるで寝てるみたいだった。
942 名前:2[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:19:25 ID:6TDAqokh0
翌日、私たちは「お礼をしなきゃ」とお菓子を持ってその家を訪ねた。
けど、着いたら。そこ、どう見ても空き家。昨日見た時は、確かに普通の家
だったのに。
屋根瓦とかはがれてるし、壁も一目見て「腐ってる」とわかるような状態。人
の気配もしない。でも、昨日見た紫陽花は確かにそこの庭に生えてる。近所で
他に庭に紫陽花がある家は無かった。
叔父と一緒に「確かにここだったよね?」とうろうろしていたら、従姉妹が
「よそのおじいさんが、独断で譲ってくれたんかね?」
と言い出した。
そうかも……と私たちは納得しかけたが、その時改めて考えてみると、あの
男性は私たちが何も言わないうちに紫陽花を渡してくれた。
いくら私たちが喪服だったからって、そんなすぐ用件がわかるだろうか?
それに、私たちが男性に話しかけた時、男性は既に手に紫陽花の束を持ってい
たようだった。まるで、私たちが来るのがわかっていたように。
私も叔父も従姉妹も、何となく黙ってしまい、結局空き家の玄関にお菓子を
置いて帰った。誰もいない家に何度も頭を下げて。
あれから一年経ったが、いまだに不思議。
その家とばあちゃんとの縁も見えない。
けど、あの家に住んでいた人以外の「何か」が、私たちに優しくしてくれたの
かな、と思っている。